素直な人は、ひとりだけ叱られるという経験が多い
同じ失敗をしても、自分ひとりだけ叱られるという不思議

誤った仕事のやり方をしていて上司に叱られるというのは、職場でよく見かけるワンシーン。けれども、同僚だって同じやり方をしていたのに、なぜか自分の方だけ怒られた。そんな経験はありませんか?
素直な人は、職場で周囲と同じ動き方をしていても、ミスを指摘される回数がやや多い傾向にあるように思います。これは素直に生きるデメリットであり、見方を変えればメリットでもあります。
私も社会人になってから何度もそういう経験をしました。
「えっ……。どうして私だけに言って、隣の同僚にはなにも言わないの?」
もちろん、叱るなとは言いません。それが適切な指導であるならば行うべきです。でも同じミスを指摘すべき相手が2人、3人と並んでいるのに、自分だけ言われるのは正直理不尽、そう感じたのも事実。この扱いの差はなぜ?
言いやすい人と言いにくい人という選別

その答えは、立場を逆にして考えるとよくわかります。
自分が上司だとして、後輩が明らかに仕事のやり方を間違えている、注意しなきゃという状況だったとします。そのとき、すんなり声をかけられる人とかけにくい人がいるはずです。
声をかけやすい人は、こちらが指摘したことを素直におとなしく聞いてくれます。嫌な顔もしません。
一方の声をかけにくい人は、ミスを指摘されると、不機嫌になるどころか逆恨み・逆ギレされる恐れのある人です。普段からカッとしやすい人、人の噂を言いふらす”スピーカー”もこちらに含まれます。一言でいうならば、なるべく刺激したくないタイプです。
もしこの2人が並んで座っていたら、おとなしく聞いてくれる方に指導して終わりにしたいと思うのが人の常というもの。もうひとりの後輩は隣にいるのだから、漏れ聞こえてくる話で「これは間違ったやり方なんだ」と察してくれるに違いありません。
上司としては、地雷を踏む危険を冒さなくてすむというわけです。誰だって、余計な恨みは買いたくありませんから。指導する側から見れば、素直な人とはちょっとした便利な存在なのです。
会社における、素直に生きることのリスク
叱られる機会に恵まれるメリットとデメリット

そのようなわけで、言う側から見たときに「言いやすい人」と「言いにくい人」が存在し、これが言われる側にとっては「言われやすい人」と「言われない人」の分かれ目になります。
言われる当人にしてみれば、あまり気分の良い話ではありません。それでも、悪いことばかりではないですよ。
その上司が感情的に怒るタイプではなく、きちんとした理由ありきで叱ってくれる人であれば、叱られがちの素直な人は成長の機会に恵まれます。
「この人は素直だから、少しきついことを注意しても、ちゃんと受け止めて自分の糧にしてくれる」
相手が素直な人だけに、叱る方にはこんな安心感があります。安心できるからこそ、相手が必要とするアドバイスも叱責もためらいなく差し出してくれます。将来素直な人が成長した暁には、上司との間に強い信頼関係が築かれて仕事がやりやすくなるというメリットも。
叱り下手なクラッシャー上司にだけは要注意
しかし、これがクラッシャー上司など”ハズレ”タイプの上司だと、ガンガン言われる一方という負のスパイラルに陥ってしまいます。
論理思考が大好物のクラッシャー上司にとって、論理より感情に重きをおく素直な人は”猫から見たネズミ”。格好の標的となります。しかも、上司当人は無意識のうちに仕掛けてくることが多く、やっかいです。
運悪くクラッシャー上司の下についてしまったら、なんらかの対策または逃亡を検討してください。「厳しい状況でも耐えてこそ、会社員の鑑」とか考えていると、言葉でめった打ちにされて、心を破壊されます。
クラッシャー上司のような、論理の正しさを絶対正義として突きつけてくるタイプは素直な人にとって天敵。見かけたら要注意です。

最悪のシナリオ。リストラの対象として目を付けられる
“言われやすい”素直な人にとって最大のリスクは、人員整理(リストラ)の対象にされやすいことでしょう。
これは残念ながら、現実によく起こっているようです。試しに「素直な人 リストラ」で検索してみたら、予想以上の関連記事が出てきて驚きました。
とはいえ、無理もないことだと思います。もしあなたが人事担当だったら、どうですか?
決まった人数をリストラ対象として、あげなくてはいけない。能力・年齢による選別はもう終えた。あと残っている基準があるとすれば、次の2つでしょうか。まず、「この人ならクビにされても、すぐ次を見つけるだろう」。それから、「この人なら、ごねずに辞めてくれそう」です。
恨みを買いたくないと考えたら、まず狙うべきは素直で物わかりが良い人。これしかありません。ミスを指摘するときと同じ構図が、リストラの場でも成り立ってしまうのです。
まさに素直な人にとっては、最悪のシナリオです。
社内で目を付けられないための対策
日頃から芯の強さを見せるようにする
日頃から芯の強さを見せるよう、心がけるようにしてください。譲れない物は譲れない。素直な人=言われるまま流される人という印象をいったん周囲に与えてしまうと、くつがえすのが難しくなります。
もちろん、不自然にかたくなな態度をとる必要はまったくありません。そうやって演技することは、あなたの精神衛生にも良くない効果を与えます。あくまで素のまま、素直に振舞いつつ、主張すべきところは主張する。難しいかもしれませんが、この“たおやかさ”が自己防衛につながります。

「普段は素直になんでも『はいはい』聞くけれど、いざとなったらてこでも折れないんだな」
社内にそう思わせることができたら、しめたものです。
肝心なのは、社長や人事部など、雇用を握っている人間にそう思ってもらわないと意味がないということ。朝挨拶をする程度の浅い関係だと、表面的な部分だけで判断されてしまうので注意です。飲み会やエレベーターで一緒になったときなど、折を見つけて交流をはかる必要があります。
ここまでする必要があるかなとも思いますが、派遣など非正規社員の方、経営状況が思わしくない会社に勤めている方は、予防線を張っておいた方が無難かもしれません。
私も経験しましたが。関わりが浅い担当者ほど、それこそ物を捨てるように雇用を切り捨ててきます。自分がお気に入りのスタッフは、たとえ少し暇そうにしていてもちゃんと手元に残します。
ひとりで抱え込まず、積極的に人に話す
「なんで私だけ……」
そうウジウジ悩み始めたら、相手の迷惑だなんて考えず、同僚や先輩に相談してみましょう。社内に話せる相手がいなければ、社外の人でもかまいません。
時間がなければ、メールやLINEで気のおける友達に打ち明けるだけでも、だいぶ気分がすっきりするはず。
もし口にするだけでも心理的な負担を感じるようであれば、日記を書くことで感情を吐き出せます。誰にも見られない安心感で、他人には言いくいぶっちゃけた本音も書けるのでおすすめです。

「あの人、暇なんだ」と思われないよう注意する
ようやく日本社会でも、残業する人より、定時で仕事を終える人の方が効率がいいという見方も出てきました。しかしそれはほんの一握り。古い体制の組織において目を付けられるのは、定時上がりの人たちです。
私がその事実に気付いたのは、すべてが手遅れになったあとのことでした。
入社して以来バカ正直に、「お先に失礼します」と各グループに声をかけながら帰っていたんです。あとになって、社長が私を切りたくてウズウズしていると知ったとき、まっ先に浮かんだのがこの行動でした。帰りの挨拶のとき、なぜか社長とよく眼が合っていたんです。
「こいつ、いつも早く帰るんだな。そんなに仕事が少ないんだろうか」
きっとそう考えたのでしょう。私が経営者でも毎日同じ人間が早く上がっているのなら、その人間の業務を確認しますもの。
でも日報を確認したところで、その人が定時で上がるために努力している部分までは見てもらえません。むしろ、そのまわりの状況(営業であれば、全体の売り上げが落ちているなど)に目を向けられてしまうと危険です。
その点、同じように定時上がりの常連だった先輩はしっかりしてました。人目につく表口ではなく、裏口のドアから帰っていたんです。挨拶も自分のまわりの人だけに留め、風のように足早に執務室を出て行きました。これならよそのグループも社長も、彼女が私と同じ常連だったと気が付かなかったでしょう。
先輩はかなり内気な性格だったので、単に挨拶が煩わしかっただけかもしれません。しかし彼女のやり方は、結果として雇用を守る処世術になったのでした。
以前の記事でもそんな話を書きましたが、バカ正直に振舞ってとんでもない結果になるというこのパターン。素直な人の王道なので、ちょっと気を引き締めた方がいいかもしれないです。

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