素直ゆえに他者や情報に影響されやすい
自分を染めすぎて、自分の素の色を見失う
「そうなんだ。それいいね!」。素直な人は、良いと感じたものをなんでも素直に取り入れていきます。
変なこだわりがないので、このIT万能時代に強いタイプともいえます。ある日突然社内のシステムが変わったとしても、周囲が戸惑ったり不平を漏らす中、素直な人は何事もなかったかのように使い始めます。
しかし、雑食的ともいえる素直さはリスクも孕んでいます。「これいいね~」と、こっちにフラフラ。「それもいいね~」と、あっちにフラフラしてしまうのです。つまりは、他者や情報に振りまわされやすくなります。
素直な人は「染まりやすい布」です。新しく取り込んだもので、どんどん自分を染め変えていきます。そして、ある時気付くのです。「私は元々何色だったのだろう?」と。あろうことか、一番肝心要な自分自身を見失ってしまうのです。
軸があれば情報に流されない、判断にためらわない
次々と自分を染め変えても、素の自分を見失わないためには、自分自身の中にしっかりとした「軸」を持つことが求められます。
軸は、あなたがなにかを判断するときの基準です。新しい情報が本当に必要なものなのか、かえって害になりはしないかを判断します。また、倫理感を試される場面や仕事を選ぶ場面でも、ためらいなく決断する力を与えてくれます。
軸は、日々行っている選択の積み重ねで形作られます。ですので、一朝一夕で育てられる代物ではありません。ある程度の時間が必要なのです。
自分オリジナルの軸の作り方
まずは人前で好きなものを言えるようになろう
自分の中に軸を育てるためのレッスンとして、「好きなものを好きと言う」ことから始めてみてはいかがでしょうか?
自分の好みをあえて人前で明かす、という行いを日頃していますか? 自分の好みを伝える=それに合わせてほしいと暗にほのめかしているような気がして、言えるわけがないよという人、多いのではないでしょうか。
親しい人とのおしゃべりでは、「あれが好き、これが好き」という話になるかもしれませんね。しかしこのレッスンは、それほど親しくない人の前で行うことで意味があるのです。
そこにあからさまな期待(いつかお土産に買ってきてほしいな、とか(笑))がなければ、自分の好みを人様に表明したって、ぜんぜんかまわない。私はそう考えています。
それに、好きなものを相手に知ってもらえると別のメリットも生まれます。もっと自分を理解してもらえるのはもちろん、興味があることを知ってもらえれば、相手がそれに関連する情報を得たとき教えてもらえるようになるのです。私は猫好きを公言していたため、猫のおもしろ動画や猫島の話など、マニアックな情報を知人友人から教えてもらえました。
もしこれが「嫌いなもの」だったら、批判するようで気分も良くないはず。私の嫌いなものは、誰かの好きなものである可能性もありますから。でも好きなものだったら、安心して公言できます。自分が恥ずかしいだけです(笑)。
職場では、相手のものを褒めるようにすると一石二鳥
職場でレッスンするときは、さりげなく相手のセンスを褒める言い方にすると株も上がります。相手からもらったもの、相手の持ち物の中で自分が「好きだな」と感じたら、それを素直に口に出します。こんな感じです。
「お土産のおまんじゅう、とてもおいしかったです」
「このポストイットユニークですね。こんな風に変わった文具って好きなんです」
素直な人には、お世辞が苦手な人が多いと思います。でも、これなら言えるのではないでしょうか。一番の目的は相手をヨイショすることではなく、「それ、好きです」という自分の気持ちを表明することにあるのですから。
好きなものを公言する。一見するとそうは見えないかもしれませんが、これも「選択」なのです。「自分を取り巻くものの中から、好きなものを選ぶ」「好きなものを隠しておかず、人に伝える」、ほら、2つも選択を実行していますね。
こうして人前で自分の好みを明らかにすることで、自分の中に軸ができていきます。そのうち自分なりの価値観が生まれていくのです。
なあなあに生きて、選択を回避している間は軸は育ちません。そして気が付いたときには、流されてしまっています。
軸を育てるために、自分に選択の機会を与えよう
適当に答えてしまってもいいことって、世の中にたくさんあります。その中のいくつかだけでも、大事に時間をかけて選択してみましょう。これが2つ目のレッスンです。「●●だから、●●を選んだ」と言えるところまで考えてみるのです。
自分自身は、選択の積み重ねで成り立っている。その自覚が軸を育てる第一歩でもあります。
適当な選択でもよくよく分析してみると、例え紙一重の差だとしても、AではなくBを選んだ理由が必ず存在します。コンビニでスイーツを選ぶときも、ぜひ意識してみてください。
「今日はなんとなくエクレアの気分」ではなくて、「なぜエクレアを選んだの? シュークリームではいけないの?」と自分に問いかけてみます。
自覚して選択を行うのは、初めはかなり疲れると思います。これまでとはまるで違う考え方を自分に強いているのですから。ですので、自分が行う選択をいっぺんにそうしようとは思わず、1日1回だけじっくり選択するなど、ちょっとずつ始めてみればいいと思います。
日記を書いて、自分の考え方や好みを把握することでも軸は育ちます。もし日記を書いてみようと思ったら、日記についての過去記事が役に立つと思います。
軸を作るには長い時間が必要です。今ご紹介した2つのレッスンも、焦らず、疲れない程度に取り組んでみてくださいね。
一度軸ができてしまえば、もうぶれない
1本の木が、芽吹いてから大木になるまで時間がかかるように。自分の中に軸を育てるには、長い月日がかかります。軸が生まれているのかを確かめる方法もなく、不安に感じるかもしれません。
それでも「選択すること」を自覚して毎日を送っていけば、ぶれない軸は必ず自分の中にできあがっていきます。そうなれば、もう何物にも惑わされません。あらゆるものを受け入れる心の柔らかさを持ちつつ、それでも自分を崩さずに生きていけることでしょう。
自分を数え切れない色に染めながら、その芯には自分自身の素の色も大事に保っている。きらびやかな飾りに彩られたクリスマスツリーのごとく、自分自身をいろいろな色で彩りながら、自分としての本質を守っていけるようになります。
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