『ここで辞めたらただの負け犬!』から、厳しい環境でも耐え抜く勇気と知恵をもらう

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自分が不幸なときは、同じように不幸な人の話を聞きたくなる

妹の失笑を買った1冊の本

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久し振りに妹が遊びに来ました。私の部屋で一緒に話をしていたとき、畳に転がっている1冊の本を目を留めました。皮肉を込めた苦笑いを浮かべています。

「そういう本を読むのはわかるけどさ、せめて(表紙を)裏返しにしようよ

別にエロ本ではありません。しかしその本は、相手をドン引きさせるほど強烈なタイトルを冠していました。

『ここで辞めたらただの負け犬!』、サブタイトルは『ブラック企業で「修行」した男の日常』です。著者の覇気が感じられて、とても良いタイトルだと思います。

でも、これを読んでいるのを家族や知人には知られたくないかも。……もう見られちゃったけど。

ブラック企業に勤める”同志”の体験談を読もうと考えた

精神的にキツい会社に通っていた私は、折れそうな心を支えるために、同じような境遇にある人の本を読もうと考えました。そこで、今流行りのブラック企業体験記を取り寄せたのでした。

実を言うと、前向きな気持ちでこの本を手にとったわけではありません。本の中でもいいから共感してくれる人が欲しかったのです。ただ、慰めが欲しかった……。

すでに私の職場事情を知っていた妹は、そんな私の本心を見抜いたに違いありません。

著者はブラック企業で4年間の修行を完遂した勇者

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家業を継ぐと決めたのが地獄の始まりだった

現実世界では、「勇者」と呼べる人にはめったにお目にかかりません。リアル世界における勇者の功績は案外地味であり、本人も自分の功績を声高に主張しないため、人々に気付かれないことがほとんどです。

この本の著者の楯岡氏は、そんな”隠れ勇者”のひとりと言えます。言葉の暴力と無慈悲なノルマに加えて、殴る蹴るの暴力まで。帰宅は毎日深夜。このような過酷な状況を「修行」と言い切り、やり遂げたのですから。

著者は、妻の両親が営んでいる不動産業を継ごうと決意します。彼自身この業界の経験がなかったため、大手不動産会社に就職して業務を学ぶことにしました。しかし、この選択が長い苦難の始まりでした。

ブラック企業やクラッシャー上司は、面接の場では見抜けないことが多い

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ブラック企業に入社してしまったら最後。なかなか逃げ出せない

これだけネットが発達した時代でも、すべての会社の口コミが見つかるわけではありません。

面接の場で確かめようにも、企業は応募者をお客様として扱います。丁寧に対応しなかったばかりに悪い口コミを書き込まれたら、会社のイメージが傷付いてしまうからです。

このようなわけで、会社がブラック企業であったとしても、後に上司となる面接官が実はクラッシャーだったとしても、見抜けない可能性の方が高いでしょう。

ましてや、著者のように面接は本社、配属先は営業所という流れではわかるわけがありません。

会社でつらい目に遭っているのは、きっとあなただけじゃない

「上には上がいる」

それがこの本に対する、最初の感想でした。なんだか自分の悩みがちっぽけに思えてきて、うじうじ悩んでいたことが楯岡さんに申し訳なくなりました。

私は言葉の暴力でサンドバックにされていても、体までは傷付けられていません(明らかにパワハラなことはやらないと最初に明言していた、ある意味狡猾な上司でした)。1日に5000枚のチラシを撒けという無理ゲーなノルマも与えられていません。ひどい会社で働いている人ランキングがあったとしても、私は決して「上位」には入らないでしょう。

自分よりひどい状況の人を見て気が楽になる――なんだか嫌味で申し訳ない限りですが、おかげで自分自身や現状を客観視できるようになりました。

あえてブラック企業に留まる勇気、あなたにはありますか?

「こんな会社、やめてやる!」

著者は本気で退職を考えました。こんなひどい状況であれば、そのまま辞めて当然ともいえます。実際、彼の後に入ってきた人たちは次々と辞めています。

それなのに、あえて留まる道を選んだのがこの人のすごいところです。そう決意させたのは上司のある一言でした。これまでどんなに罵倒されてもボクサーのように耐え忍んできた著者ですが、この一言には号泣してしまいます。

(おまえがダメなのはお前だけのせいじゃないんだよ。お前の人生に携わったすべての人間のせいなんだ。お前のダメさ加減を恨むなら、そいつらを恨むんだな) ※P76より

自分はいい、けれども自分の人生に関わってきた人たちまで悪く言われる筋合いはない――。

著者は悔し涙を流しながら決意します。「ここで辞めたら負け犬だ!」「辞めるのは後回しだ!」と。

学ぶだけ学んだら、さっさと会社を辞めるべし

学ぶだけ学んだら、さっさと会社を辞めるべし

ブラック企業は終の棲家ではない。あなたは自由になれる

嫌でたまらない会社であれば、「スキルを学んでさっさとやめる」のは至極当たり前の選択肢です。

しかし人は、なかなかこの境地まで達せません。次の職探し、家のローン、子どもの学費などを思い、気持ちが揺れます。スパっと割り切るのは難しいのです。

その点、著者は目的が明確だったものの、嵐に耐え忍ぶ日々を過ごすうちに初心を忘れていました(この環境じゃ無理もないなぁ)。思い出させてくれたのは、親しくしていた先輩社員の一言でした。

仕事場へ差し入れに来てくれた先輩に、著者は初めて事情を打ち明けます。義理の両親の会社を継ぐために、仕方なく会社を続けているのだということを。

事情を聞いた先輩は何気なく返しました。

「なるほどね~、そうだったんだ。なら一通りの仕事をさっさと覚えて辞めちまえよ。そのほうが絶対いいだろう?」 ※P124~125

なんて清々しく、まばゆい台詞でしょう?

著者のみならず、この“当たり前すぎる希望”を忘れている人、多いと思います。今は目の前のことに精一杯かもしれないけれど、目的を達成した暁には自由になれるのです。なにも一生ブラック企業に勤めるわけではないのです。

ブラック企業でがんばる人は、タイムリミットを決めると心が楽になる

ブラック企業でがんばる人は、タイムリミットを決めると心が楽になる

著者と同じように、スキルや実務経験が目的で会社へ入る人は多いと思います。もし入った会社が、ブラック企業その他のひどい会社であれば、期限付きでがんばるのもひとつの手です。

「経験を積ませてもらったのだから、少しは会社に貢献しないと……」

いえいえ。そんな気遣いは無用です。会社もあなたを気遣ってくれなかったのですから。

ずっと勤めなきゃと思うと、出口が見えず、心が折れてしまいます。いつまでがんばるのか、タイムリミットを決めましょう。そうして“終わり”を見通せるようになれば、もうちょっとがんばろうという勇気も出てきます。

しかし、無理は禁物です。心身に異常をきたすようであれば、「諦める勇気」もどうか忘れずに。

クラッシャー上司に悩む人にもオススメ!著者の考え方や立ち回り方が実用的

本書はブラック企業に勤めた著者の体験記ですが、心の持ち方や立ち回り方は、クラッシャー上司に悩む人にも参考になります。

著者の上司と先輩社員は、嵐のような言葉の暴力をふるっていました。その猛攻の中で生きてきた著者のやり方は大変参考になります。そのまま活用できるテクニックもあります。

ブラック企業で著者がどうにか身を守れたのは、とっさの機転が効いた部分が大きいように見受けました。嘘の上手なつき方など、「なるほど、こうやって切り抜けるのか」と関心しきりです。事実、ウソをつけない新人たちは次々と著者のまわりから消えていきました。あぁ、適切な嘘こそ正義なり!

近年、ブラック企業に当たる確率が高くなっているように感じます。これから転職を考えている人は、万が一に備えて一度読んでおくと役立つかもしれません。

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